こども地球儀

中高生が劇場用映画を作った!?

中学生たちのまっすぐな視線で撮られたこの映像に触れると「いつのまにか自分も『大人病』にかかってしまったのではないか?」という不安に襲われる。映画について、人生について大切なことを思い出させてくれました。

是枝裕和監督がそう評した、「茜色クラリネット」は、札幌の中高生と映画のプロたちがワークショップを通じて作り上げたユニークな長編映画です。札幌のNPO法人「北海道コミュニティシネマ・札幌」が中学生を対象に2005年から始めた、「子ども映画制作ワークショップ」の集大成として、劇場公開を前提に作られました。

物語は、コトニに蔓延する謎の病気「大人病」と、それに関わっているらしいゆるキャラ・トニ子を巡って、主人公の茜たち中学生が悩み、冒険し、成長する姿を描きます。彼らのまっすぐな視線に、大人たちも夢を取り戻そうとします。子どもと大人の中間にいる思春期の彼らだからこそ、伝えることのできるピュアな思いが、映画に説得力を与えています。「茜色クラリネット」は、ファンタジックでありながら、笑いと涙の後に、ちょっと考えさせられるテーマを持った素敵な映画です。


©北海道コミュニティシネマ・札幌

監督は高校生1年生(撮影当時)の坂本優乃さん。小さい時から物語を作り、自分で演じるのが大好きだったといいます。中学生の時に、映画を作ってみたくて「子ども映画制作ワークショップ」に友達を誘って参加しました。参加してみて、坂本さんは舞台劇より、映画の方が、自由度が高く自分の考えを表現しやすいと感じたそうです。
映画づくりで一番楽しかったのはスタッフのみんなと、「ああでもない、こうでもない」と話し合いながら作品を作っていく準備期間だったと坂本さんは振り返ります。
主役のオーディションではずいぶん迷ってしまい、なかなか決められなかったそうですが、最終的に誰を主役にするかという大きな決断を自分一人でしたことで、その後の自信につながったといいます。クライマックスシーンの撮影では、主人公役に「必ずできる」と何度もテークを重ねる粘り強さを見せました。その気迫に、みんなの気持ちが一つになって素晴らしい演技が生まれたといいます。

映画作りの現場は、何かをゼロから作り出す喜び、そこに生まれる友情や葛藤と、それを乗り越えていくためのコミュニケーション力など、学校の授業だけでは得られない貴重な体験を与えてくれたようです。
坂本さんは「茜色クラリネット」を「ぜひたくさんの親子の方に見てもらって、感じたことを話合って欲しいです」と話していました。


坂本優乃監督

最後に坂本さんに、子どもたちにおすすめの映画3本を聞いてみました。
ステキな金縛り
三谷幸喜さんが大好きだという坂本さん。ユーモアで笑わせて、最後にほろりと涙が流れるそんなところが気に入っているのだそうです。
パコと魔法の絵本
心を病んでいるのに、それを笑ってしまえる物語に感動しますと坂本さん。
舞妓はレディ
同年代の女の子が、方言や歌や踊りに大活躍するところに、大きな刺激を受けたそうです。

「大人病」かもしれないあなたも、この作品の魅力に触れて、子どもの頃の夢を思い出してみてはいかがでしょうか。

11月1日(土)よりユーロスペースにて公開中
劇場情報
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