こどもとメディア

榊原先生インタビュー 榊原洋一(さかきはら よういち)お茶ノ水女子大学大学院人間文化創成科学研究科教授。専門は、小児科学、小児神経学、発達神経学など。NHK「すくすく子育て」等にも出演中。
Q1 何歳からDVDを見せていいのでしょうか?
Q2 DVDなどを長時間見た場合、どんな影響がありますか?
Q3 映画館で映画を見ることができるのは何歳から?
Q4 映画を見ると子どもの発達にどんなよい影響がありますか?
Q5 字幕付きの映画は何才くらいから楽しめますか?
Q6 3D映画を見せた場合の影響は? 
Q7 場面展開の早い映画を子どもが見た場合、子どもの脳への影響はありますか?
Q8 男の子が「銃」が好きで困っています。映画の影響でしょうか?
Q9 暴力的な映画をたくさん見ると悪い影響はありますか?
Q10 子どもが見たがった場合、怖い映画を見せてもいいですか?
Q11 何歳くらいになれば、死を描いた映画を見てもいいでしょう?
Q12 英語のDVDを見せると英語ができるようになりますか?

Q1:何歳からDVDを見せていいのでしょうか? 

A:現在のデータからは、はっきり何歳と断言できません。

“見ている”状況によって、子どもへの影響が異なります。 映像を見ること自体の影響なのか、それとも映像の内容に関することなのかを分けて考えなければなりません。まず内容ではなく、見るということに関してですが、家庭で触れることが最も多い映像メディアであるテレビについては、研究が進んでいます。

子どもが映像を見る態度には次の3つがあります。

  1. ①専念視聴(食い入るように見ている)
  2. ②ながら視聴(遊びながらときどき見ている)
  3. ③テレビがついているだけ

日本では、2,3歳児がテレビに触れている時間は2-3時間ぐらいだと言われています。この位の子どもは集中力もまだないため、②または③が多いと思います。テレビの研究では③の調査がほとんどです。 アメリカの小児科学会などは、2歳児以下に映像メディアを見せることを奨励していません。それは2歳児以下に映像メディアを見せても、効果があるという研究結果がでていないからです。

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Q2:DVDなどを長時間見た場合、どんな影響がありますか?

A:視力の低下や落ち着きの無さにつながる、と心配される方が多いのですが、因果関係は証明されていません。

よく、テレビやDVDの視聴で目が悪くなる、落ち着きがなくなる、などの影響を心配する親ごさんがいらっしゃいますが、何事も程度問題です。テレビを見るから落ち着きが無い、というより落ち着きが無い子がテレビをよく見ている、という研究報告もあります。つまりテレビを見る=落ち着きがない子になる、という因果関係は証明されていません。 ただ、統計では1日に4-5時間TVを見ている子ども(幼児)は、言葉の獲得が遅れる傾向があるといわれています。しかしこれも、TVを見ている時間以外に親子でコミュニケーションが取れていれば、影響はほとんどないようです。TVに子守をさせるような状態が日常であれば、それを見直すべきでしょう。長くても1日2時間程度にした方がよいでしょう。

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Q3:映画館で映画を見ることができるのは何歳から? 

A 家族のお出かけの機会のひとつ、楽しみのひとつ、と捉えれば、各家庭の判断でよいと思います。

映画館での視聴は、家庭の中で見るテレビやDVDとはまた違う面があります。「おでかけ」するという行為が加わるからです。毎日見るわけではないので、視聴時間に関しては気にしなくてもいいでしょう。 ただ4,5歳の幼児の場合、2時間を超えるような長編はまだ難しいかもしれません。個人差はあるとしても、4,5歳の幼児の集中力は20分程度と言われています。もちろん好きなアニメーションなど作品によっては、もっと長い時間集中できるかもしれないし、実際にどのぐらい集中できるかということは一概には言えません。映画のストーリーや複雑さなど内容によるところも大きいからです。 たとえ飽きてしまっても、ある程度がまんさせるなど、それはそれで家族と一緒のレクリエーションの体験としてはよいのではないかと思います。

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Q4:映画を見ると子どもの発達にどんなよい影響がありますか?

A:知識や体験を増やす、といったメリットはたくさんあります。

ドキュメンタリーや外国の映画を見て、世界や日本の行ったことのない場所の知識を得る、そこから言葉の知識を増やす、など知らなかった世界や自分では行けない場所の知識を"体験"できる。映像の力は大きいですよ。視覚から得る情報量は圧倒的ですから。 また、映画を見ながらワクワクしたりスカッとしたり、泣いたりホッとしたり、エンターテイメントとして楽しみながら、感情の体験を増やすことにもなります。 中学生以降になれば、誰かと一緒に見て感情を共有する楽しみや、デートコースとして楽しむこともあるでしょう。 知識、行動、感情それぞれについて、映画が子どもの成長に与えるメリットは、たくさんあると思います。

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Q5:字幕付きの映画は何才くらいから楽しめますか? 

A:中学生以上なら十分楽しめるのではないでしょうか。ただ個人差があるのでそれ以下の年齢が楽しめない、ということはないと思います。

最近では吹き替えの映画も多いですよね。字幕の映画を子どもと楽しみたい、という親ごさんもいらっしゃるでしょう。字幕は文字、それも漢字を"読む"ことができることが大前提です。常用漢字がほぼ読める中学生ぐらいでしょうか。それに加えて字幕のスピードについていけるかどうかが大切です。 ただ漢字理解力や、情報処理能力にも個人差がありますので、中学生以下では楽しめない、ということではないと思います。 注:編集部調べ) 常用漢字……小学校卒業までに学ぶのは1006字/中学で939字。計1945字 大人が字幕を読むスピード……1秒に4,5文字/縦字幕の場合→1行10文字(2行まで) 横字幕の場合→13文字

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Q6:3D映画を見せた場合の影響は? 

A:【3D】は、まだ新しい分野なので正確な影響は判っていません。

お母さんたちが心配するとすれば以下のふたつでしょう。 ①目が疲れるのではないか。 ②迫力がありすぎて子供に刺激が強いのではないか。 3Dメガネを使って平面の物を立体的に近くで見せる、といういわゆる"脳をだます"行為なので、確かに目の疲労があるかもしれない、という心配はあります。ただ眼科医界でもはっきりしたデータはでていません。 ②についてですが、すごく怖いホラーを子どもが3Dで観たら、それはもちろん怖いと思います。PTSD(心的外傷ストレス障害)にならないとは断言できません。 一方で、大好きなアニメのキャラクターが、優しくそっと、近くで手を差し伸べてくれるような映像だったら子どもたちはきっと喜びますよね。だからこういった【3Dの心理的影響】については映画の内容によって大きく左右されると考えられます。ただきちんとした研究やデータがまだ少ないので、科学的にこうです、ということはまだ言えないというのが現状です。

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Q7:場面展開の早い映画を子どもが見た場合、子どもの脳への影響はありますか?

A:一時的に疲れてしまうかもしれませんが、長期的な影響は判っていません。

【早い場面展開のある映像】が、脳の中でも重要な機能をつかさどると言われる前頭葉にどういう影響を及ぼすかを調査したアメリカの研究があります。 1)お絵かきをしている子供 2)11秒に一度場面展開のある映像を見ているこども 3)30秒に一度場面展開がある映像を見ている子ども それぞれ9分経った直後に、簡単な前頭機能テストをするんです。そうすると、2)の早い場面展開のある映像を見た子供は前頭葉を使う機能が落ちている。1)のお絵かきをしていたグループと 3)の30秒で映像が変わる映像を見たグループの子供は前頭葉の機能はあまり落ちていない。ただ、これは映像を見た直後なので疲れによるものだと考えられています。長期的に弊害が出るかどうかはわかりません。内容にもよりますし、毎日朝から晩まで早い場面展開の映像を見るわけではないと思いますので。

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Q8:男の子が「銃」が好きで困っています。映画の影響でしょうか?

A:影響はあるかもしれませんが、男の子が銃に興味があるのは普通です。

映画の影響がまったく無いとはいえないでしょうが、男の子なら銃やナイフが好きな子どもは普通にいると思います。コレクターも男性のほうが多い。性差や好みという面もあるでしょう。

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Q9:暴力的な映画をたくさん見ると悪い影響はありますか? 

A:暴力的な映画を見たから、必ず暴力的になるということは一概には言えません。

暴力的なシーンを見た直後は、子どもならマネしてみたくなることはあるかもしれませんが、それがずっと続くということはないでしょう。 気になるのであれば子どもに見せる前に親が内容をチェックする、また一緒に見ているDVDに暴力的なシーンがあったら、それについて否定的なコメントを言ってみるなどしては、どうでしょう。

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Q10:子どもが見たがった場合、怖い映画を見せてもいいですか?

A:怖い映画を見れば、ストレスを感じることはあります。

大人は自分で選んで怖い映画を見るわけですから、怖い思いをしてもいいのです。ただ、子どもに見せる場合は若干注意が必要です。怖いシーンなどをあまり繰り返し見せると、ストレスを感じて睡眠障害になる場合もあるからです。怖いものを見ると、脳の中の扁桃体が反応します。この扁桃体の反応が、ストレス耐性に影響を与えるといわれています。 しかし、まったくストレスの無い生活が人間にとっていいかといえばそうでもないように、怖い映画も頻度や程度によるのではないでしょうか。 映画を見ることが子どもの経験を増やすことの一つだと思えば、怖い映画が一概にだめとは言えません。気になるなら先に親が見て、見せていいかどうか判断したほうがいいでしょう。

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Q11:何歳くらいになれば、死を描いた映画を見てもいいでしょう? 

A:小学生高学年くらいになれば、ある程度理解できるでしょう。

子どもは、たとえば5歳なら5年しか生きていません。小さい子には、「明日」は理解できても、1年後は遠い未来のかなた。5歳で人生を振り返るのは無理なように、「死」を怖い、恐ろしいと思えるようになるには「未来」に関して意識があるかどうか、また「死」を想像できるかどうかです。小学校高学年になれば、かなり長いスパンで物事を考えられるようになります。 「死を理解させたい」という理由で映画を見せるのであれば、「死」が、永久なお別れなのか、目の前からただその人がいなくなってしまうことなのか、区別できるようであれば、映画を見ても死の意味を考えられるでしょう。

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Q12:英語のDVDを見せると英語ができるようになりますか?

A:英語を覚えたい、という意識を子どもが持っていないと難しいでしょう。

無意識の子どもに英語の映画を見せても、バイリンガルにするのは難しいでしょう。 このテーマの研究実験があります。子どもに英語を話している人の映像(DVD)を見せたときと、同じ内容で目の前で話してもらう実験をした結果、子どもは生身の人間の話す言葉のほうに反応しました。 英語はコミュニケーションの手段なので、画面の向こうの人と接触する必要がなければ英語自体は頭に入ってこないようです。英語を覚えよう、という意識が子どもにあって、映画の中の英語に耳を傾けるのであれば、この限りではありませんが・・・。 字幕を消して、英語の音を聞き取ろうとする大人にとっては、それなりに有効な学習法かもしれません。

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