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『なまくら刀』[デジタル復元・最長版][白黒ポジ染色版] (1917年)
監督:幸内純一 原版協力:松本夏樹 映像提供:東京国立近代美術館フィルムセンター

日本のアニメ100年

日本で最初にアニメーションが公開されてから今年は100年の節目にあたります。子供たちにとって、日本のアニメといえば人気のTVシリーズや、ジブリ作品を思い出しますが、100年という長い歴史には大きな転換期や、今見ても古びることのない名作の数々がありました。日本のアニメーションの歴史とその魅力について、東京国立近代美術館フィルムセンター特定研究員の三浦さん、客員研究員の木村さんにお話しを聞きました。

100年前の日本のアニメはどんなアニメだったの?
下川凹天(へこてん)が作った『凸坊新画帖 名案の失敗』(1917年)が映画館で公開された最初のアニメーションだと、近年の研究ではいわれています。しかしこの作品はフィルムの存在が確認できず見ることができません。今も見ることのできる日本最古のアニメーションは、幸内純一の『なまくら刀』(1917年)です。フィルムセンターが開設したHP「日本アニメーション映画クラシックス」で見ることができるので、ぜひご覧になってください。

世界初のアニメーションについては諸説あるそうですが、1906年~08年頃にアメリカやフランスで劇場公開されたのが始まりです。そうした作品が日本でも劇場公開されると、見様見真似で自国のアニメ作品がつくられ、10年ほどで公開されるようになりました。外国の専門家の指導を受けたり、海外の技術書が手に入った訳ではなかったので、大変な苦労があったことでしょう。ちなみに、ミッキー・マウスの『蒸気船ウィリー』がアメリカ公開されたのが1928年ですから、ミッキー誕生より11年も前のことだったのですね。


『ポン助の春』(1934年) 監督:大石郁雄 原版提供:プラネット映画資料図書館
映像提供:東京国立近代美術館フィルムセンター

100年前のアニメと今のアニメはどんなところが違うの?
100年前の映画には音がなく、ほとんどの作品がモノクロでした。そして上映時間は10分など、短いものが中心で、映画館の中で音楽が演奏され、活動弁士がお話の説明を上映中にしていました。チャップリンの短編映画が人気を博していた時代です。ちなみにこの頃の映画の入場料は、通常の席で大人30~40銭、子供10~20銭。当時コーヒー1杯5銭だったので、映画は約6~8倍の料金ということになります。今とあまり変わらなかったのですね。

その後、映画に音がつくようになります。音がついた日本のアニメーションの初期作に大藤信郎の『黒ニャゴ』(29年)があります。大藤は日本のアニメーション発展に大きな役割を果たした人物で、興味のある方はこちらをご覧になってください。
大藤信郎記念館

1940年代は戦争の時代です。敵国であるアメリカ映画は上映が厳しく制限されました。1937年にディズニーが世界初の長編カラーアニメーション映画『白雪姫』を発表しますが、日本では1950年まで見ることができませんでした。その間日本では、戦意高揚目的で軍が後援して『桃太郎の海鷲』(43)や日本初の長編アニメーション『桃太郎 海の神兵』(45)が作られました。長編映画の製作という技術の進歩があったとは言え、アニメーションが戦争に利用されてしまったのは悲しいことですね。しかし一方で、政岡憲三が『くもとちゅうりっぷ』(43)という今見ても驚くような傑作を作った時代でもありました。

『ルドルフ 赤鼻のトナカイ』(1964年)より
人形アニメーション作家 持永只仁展開催中

戦後のアニメ史で重要な出来事の一つが、長編アニメ制作を目的に、東映動画(後の東映アニメーション)が1956年に設立されたことです。2年後の1958年に日本初のカラー長編アニメ『白蛇伝』を公開します。『白雪姫』から21年後 のことでした。高畑勲、宮崎駿両監督もこのスタジオ出身なことは、よく知られています。
もう一つは、1963年に手塚治虫の「鉄腕アトム」のTVシリーズが放送開始されたことです。その後70~80年代にかけて「ルパン三世」「宇宙戦艦ヤマト」「ドラえもん」など数多くのTVシリーズが誕生し、日本アニメは海外にも輸出されるようになりました。一方で、オリジナルの劇場用長編映画製作を目指して、スタジオジブリが1985年に設立されています。

主に子供向けだったTVアニメが、70年代末頃から青年向けにも作られるようになります。80年代にはビデオ作品、90年代には深夜放送のTVアニメが登場し、大人の鑑賞に堪える複雑な物語、登場人物の心理描写、絵のクオリティを持った作品が増加して、独自の発展を遂げていきます。この間の代表作として「機動警察パトレイバー」、「新世紀エヴァンゲリオン」があげられます。

また、あまり知られていませんが、アニメーションは映画やTV以外にも、アートやコマーシャル、教育目的など、初期から今日に至るまで多くの作品が作られ、アニメーションの発展に寄与しています。

日本のアニメの特徴は何? どうして日本が「アニメの国」として外国から注目されているの?
これほど多くのアニメーションが作られている国は、アメリカと日本以外に例がないそうです。その意味で、アニメ大国といわれるのも当然のことでしょう。しかしエンタテインメントからアート、ひいてはサブカルチャーまで、質と量において、多種多様なアニメーションが作られているのは日本だけ。世界の観客を相手にするアメリカと違って、日本は自国の観客を強く意識して作っているので、個性がよりはっきりしています。青年向けアニメ制作を通して、表現や演出が深化したことも関係しているのでしょう。そうした表現の豊かさ、オリジナリティ、芸術性が世界各国で受け入れられ、人気を博しているのです。

最後にみんなに馴染みのあるジブリ作品より前に作られたおすすめ作品をご紹介いただきました。また、日本アニメーション映画クラッシックスには、「アクション」という愉快なページがあります。「飛ぶ・跳ぶ」「踊る・歌う」などアニメーションの動きに注目した動画を楽しむことができるので、みなさんも試してみてくださいね。

http://animation.filmarchives.jp/categories/motions/2

<おすすめ作品>
●「なまくら刀」(1917)監督:幸内純一
http://animation.filmarchives.jp/works/play/100183

●ポン助の春(1934)監督:大石郁雄
http://animation.filmarchives.jp/works/play/91355

●くもとちゅうりっぷ(1943)監督:政岡憲三

●長靴をはいた猫(1969)監督:矢吹公郎

●チコタン ぼくのおよめさん(1971)監督:岡本忠成

●パンダ・コパンダ(1972)監督:高畑勲

●JUMPING(1984)監督:手塚治虫

●銀河鉄道の夜(1985)監督:杉井ギサブロー

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