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©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

2016年パパ・ママ映画ジャーナリストが選んだベストワン

恒例のパパ・ママジャーナリストに選んで頂く「今年の1本!」。2016年のベスト1には邦画・洋画どんな作品が選ばれたでしょうか?!

森直人さん

グッバイ、サマー [Blu-ray]

●洋画『グッバイ、サマー』 家族で「恐竜博2016」@上野・国立科学博物館に出かけた身としては『アーロと少年』を挙げたかったのですが、ディズニー・アニメなら『ズートピア』のクオリティが圧倒的だったかなと(アーロのフィギュアは買いましたよ)。ただ個人的に挙げたいのは、ミシェル・ゴンドリー監督の半自伝的な思春期映画『グッバイ、サマー』。学校で浮き始めた少年が、変わり者の転校生と共に繰り出すひと夏の冒険。お母さんの心配はそっちのけ(笑)。反抗は自立の始まりと心理学的にもよく言いますが、僕自身が中二病を発症した頃と、うちの4歳の息子の10年後のことを想いながら観ました。ヘルマン・ヘッセの小説に近い味わい。これと『シング・ストリート 未来へのうた』は「14歳男子」映画の双璧的名作!

●邦画『ちはやふる-上の句-』
息子の映画館デビューとなった『劇場版 動物戦隊ジュウオウジャー ドキドキ サーカス パニック!』&『劇場版 仮面ライダーゴースト 100の眼魂とゴースト運命の瞬間』の二本立てをマジで挙げようかと思いましたが(しっかり燃えましたよ!)、推薦の傑作としては『ちはやふる』、特に『上の句』のほうを。自己実現とチームプレイを主題にしたパワフルな青春映画に仕上がっていますが、他者のプライドの扱い方とか、繊細な部分にもタッチしてくる。広瀬すずのヒロインの魅力だけでなく、脇の人物たちも丁寧に描けていたのが好感大でした。あと「14歳男子」映画の名作・邦画篇として足立紳監督『14の夜』を挙げたいのですが、18禁のネタが含まれるため、こっそりお薦めしておきます(笑)。

相馬学さん

●洋画 『オデッセイ』
探査中に嵐に遭い、火星に取り残された宇宙飛行士のサバイバル。スリリングであるのはもちろんだが、何よりこの主人公のポジティブな姿勢が魅力的。食料の生産から地球への通信方法まで、あらゆる科学の知識を駆使して救助の可能性を高めようとする。状況的には孤独であってもユーモアを忘れないキャラクターだから、悲壮感はない。そんな陽性の匂いを嗅ぎ取ったのか、はたまた科学のリアルな描写に惹かれたのか、普段は洋画にあまり興味を示さない、いかにも現代っ子な高校生の息子が珍しく“観たい”と言ってきた。


(C)2016「君の名は。」製作委員会

●邦画 『君の名は。』
個人的な好き・嫌いはともかく、親としては、なぜこの映画が中高生の間で熱烈に受け入れられたのかを考えざるを得ない。男子と女子の心と体が入れ替わる……という物語は自分世代には『転校生』を連想するが本作の設定は新鮮で、彼らが遠く離れた見ず知らずの者同士であり、過ごす時間にも3年ほどのズレがある。このズレの間に生じたのが、隕石落下という天災。それが起こることを知っていたら、人には何ができるだろう? これは東日本大震災の恐ろしさを経験した今を生きる子どもたちにとって、ロマンスを含めて、リアルなファンタジーとして響いているのかもしれない。

落合有紀さん

●洋画 『父を探して』
第88回アカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートされたブラジル発のアニメ。強敵を前に受賞はならずでしたが、私的オスカーを差し上げたかった傑作です。 全編手描きの温かさとコラージュのおもしろさ、セリフ代わりに流れるかわいらしい音楽と美しい音、丸と点と線だけで描かれる主人公の少年と、すべてがツボ! 農村で両親と仲良く暮らしていた少年が、どこかへ出稼ぎに行ったお父さんを追いかけて家を飛び出します。綿花畑で働いたり、都会のスラム街で音楽好きのお兄さんと一緒に暮らしたりと、ほんわかタッチで少年の冒険を描きますが、その背景はブラジルの厳しい現実と歴史の連続。まぁそういった難しいことは大人が頭に置いておけばいいかなと思います。 ちなみに一緒に見た息子(当時中1)の感想を。「いい意味で絵がリアルじゃなくて、絵の具とかクレヨンとかいろんな技法で表現されているから、普通のアニメーションと違った感覚で見られて、すごくよかった。DVDが出たら映像だけ見たり、音も出して見たりしたい」もし、お子さんがリオ五輪のカラフルさに興味を持っていたとしたら、きっとはまるはずです。

●邦画 『この世界の片隅に』
昨年夏、広島の親戚を訪問した折に、戦艦好きの息子の希望で呉を自転車で巡りました。戦艦大和を作ったドックが現存していたり、歩道橋を掃除していた地元のおばあちゃんに案内されて潜水艦ドックや護衛艦見学に行ったりしました。呉の方たちが町の歴史や、今も最先端の造船工場や宇宙開発に関わる会社があることを誇り思い、町を大切にしている気持ちが伝わりました。
私にも息子にも特別な思い出が残る呉。見ないわけにはいきません。広島市内から呉に嫁いだ、のんびり屋のすずさんと新しい家族とのやりとりと、戦争に巻き込まれてしまう悲劇と希望をやわらかな造形で見せてくれます。夕日に照らされた瀬戸内海を白兎が飛ぶ風景や、砲弾が炸裂する空の描写など、アニメだからこそできる表現の数々に興奮しました。息子は「呉の港が攻撃されたあとの様子が、写真そのままで驚いた」と感想を述べていました。リサーチを重ねて失われた風景を再現してくれた片渕監督に感謝です。
 日常を一瞬で破壊し、人の心を鈍感にさせてしまう戦争や紛争がいまも世界で行われていて、いろんな“すずさん”がなんとか生き延びてる。「感動した。すずさんがかわいかった」で終わるんじゃなくて、その先を考えなくちゃなと強く思っています。

金原由佳さん

レッドタートル ある島の物語/マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット作品集 [Blu-ray]

●洋画 『レッドタートル ある島の物語』
ある孤島に流れ着いた男が、脱出する度に、大きな赤いウミガメに邪魔をされるだけのお話。シンプルなお話で、台詞と音楽はほとんどない。でもその静けさの中に身を沈めても、全く飽きることがありません。なぜなら、主人公の男が、その島で何を「発見」していくのか、終始、そこに視線が置かれているからです。緻密で、繊細な線による島の造形、そこに隠れている生き物、植物、そして思想や哲学や自然観。観客も一緒に発見していく作りになっていて、小さな子供から大人まで、目についたものを語り合いたくなります。また、海から来た他者をどう受け入れるか、現代社会の問題とも重なり合います。


(C)広島テレビ

●邦画 『いしぶみ』
これは声の映画です。シンプルな舞台装置のような空間で、女優、綾瀬はるかさんが、1945年8月6日、広島に投下された原爆の爆心地近くで、建物解体作業をしていた広島二中の1年生321人があの日、どういう経緯で被爆し、最期の瞬間を迎えたか、彼ら自身や親の遺した言葉を朗読して進んでいきます。はるかさんは終始、感情を抑えた落ち着いた声で、この日、なんとか家にたどり着こうとした子どもたちの行動を語っていきます。映像ではインパクトが強すぎて直視できない出来事ですが、声の情報なら、戦争というものの不条理さに怖がらずに向き合うことが出来ます。小学生高学年からの鑑賞が可能と思います。

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